サンザシとは?

サンザシは中国北部・ヨーロッパ北部のバラ科の果実で、鮮やかな深紅色が特徴的な姫リンゴのような果実を結びます。薬用として使われ始めてから2千年余りの歴史があり、中国では漢方薬として珍重されてきました。漢方薬の中でも副作用のない上薬(ウーハ)として認められているのは大きな特徴です。

また、サンザシは甘酸っぱく美味しい味わいなので、サンザシの産地として有名な大連では、日本人が梅干しを食べるのと同じような感覚で食べています。彼らにとってサンザシは長く厳寒な冬を過ごすための貴重なビタミンとミネラルの供給源なのです。

和名は山査子、英名は西洋サンザシ

サンザシは世界中で愛用されているため、様々な名称で呼ばれています。

学名・種類
学名:Crataegus cuneata
和名:山査子
英名:Hawthorn berry・西洋サンザシ(ヨーロッパ)
呼び名
ドイツ語:Weissdorn
英語:Hawthorn Red Haw

サンザシは世界中で愛用されています

サンザシは各地で様々な伝統と地域性を持っています。主にハーブ(生薬)・漢方薬・食品として利用されており、古来からの漢方処方成分はもちろんのこと、身近な薬膳や食品材料に至るまで様々です。

ヨーロッパ・アメリカでは定番のハーブ

ヨーロッパでは北部の地方で育つバラ科の植物として有名です。果実はサクランボよりも少し大きな実を付け、メイフラワーと呼んでいます。西洋医学の間では強心作用のハーブ(生薬)としてカプセルなどで飲まれており、これも一般生活のなかで習慣的に使われています。

アメリカではハウソーンと呼び、西洋医学のとおり強心作用・血流の循環を良くするために広く使用されています。ハーブ(生薬)の年間需要ランキングでは20位以内に入る人気の素材です。

また、サンザシは古代ギリシャより神聖なる木として崇拝されてきました。祝言の縁起のものとして、小枝を花嫁の冠に飾ったり、大陸のキリスト教徒の間ではサンザシの小枝を挿していれば落雷や難を免れ、屋内に飾れば厄除けになると言われてきました。メイデーの夜明けに、サンザシから採った朝露には美容の効果があるとも言われ、昔は少女たちがこの日に競って、サンザシの朝露を採取したと言われています。

朝露のサンザシ

日本では漢方薬と鑑賞用

日本では漢方薬として使われ薬剤師が漢方の調合をするときに選定されやすい素材です。それだけ人体へのアレルギー性に優れるといえます。新しいものと思われがちですが、歴史的には昔ながらのものです。現在では飲料やお茶などに使われています。高い抗酸化作用を持つことが分かっており、甜茶などのアレルギー性の症状を緩和させる商品に使われています。また、鑑賞用としても愛されており、日本庭園にはよく植えられています。北原白秋の「この道」でもサンザシの木が歌われています。

中国では二千年の歴史があります

中国では北・南部を原産とする低木植物として有名です。主に中国北部の広大な産地で有機栽培されています。毎年4月から5月頃に白い花を、9月頃に姫リンゴのような果実を付けます。

サンザシの果肉には健康維持に役立つ効能があるとされ、今から約800年前の13世紀、元朝の朱丹渓による著書「本草網目」のなかで、サンザシの優れた効能が記されています。さらに歴史をさかのぼると、約二千年前に書かれた中国最古の薬物学問書と言われる「神農本草経」のなかに登場します。そのなかでサンザシは命を養う不老長寿の薬として分類されおり、副作用の無い最上級の上薬(ウーハ)として記されています。

現在では果実から抽出して作られたジュースが出回り、健康飲料として人気を集めています。また、天日乾燥した果実は食の前後に胃腸を労わる事や、1日の美容のためにと食されています。日本で言うところの梅干のような感覚で、常に食卓にあるものです。


サンザシに含まれる成分について

サンザシの果実には、消化酵素アミラーゼ、プロテアーゼ、ビタミンC、B2、タンパク質、脂肪、タンニン、サポニン、フラボン配糖体などのほか、ビタミンA、E、カリウム、カルシウムなどが含まれています。漢方では、消化不良、健胃、二日酔いなどに用いられてきました。

また、近年では強い抗酸化活性、活性酸素消去活性を持っていることも分かりました。サンザシに多く含まれるポリフェノール成分が活性に影響を与えることが明らかになってきました。

ポリフェノール

カテキン・アントシアニン・ケルセチンなどのポリフェノール類が豊富です。

食品のカテキン含有量
(可食部100g中のカテキン量<mg>)
食品カテキン
りんご20-75
洋ナシ5-20
10-20
ブルーベリー10-20
サンザシ200-800
赤ワイン100-150
クランベリー20
紅茶10-500

ビタミン・ミネラル

ビタミンC・ビタミンE・カロチン、代謝に必須なミネラルであるカルシウム・マグネシウム・鉄分・リンなどが含まれています。

食物繊維

食物繊維としてペクチンが含まれています。

アミノ酸

他のバラ科の植物と比較して、旨味などの基になるアミノ酸を含んでいます。そのため、薬膳料理や酢豚のタレなど、調味料としても使われています。

サンザシ果実100gに含まれる成分
(可食部100gあたり)
成分含有量
クエン酸283mg
フラボノイド70.5mg
サポニン50ppm
ビタミンC81mg
ビタミンB0.09mg
食物繊維1.70g
リン27.1mg
カルシウム56.9mg
鉄分0.75mg
ナトリウム17.4mg
カリウム194mg
亜鉛1.02ppm
マグネシウム14.8mg

現代病の予防におすすめ!

サンザシは悪血(おけつ)の特効薬として利用されてきました。近年の薬理研究により、改めて血液に対する薬効が見直されています。

血液をきれいにする

サンザシは血中コレストロール値を抑え、高脂血症・動脈硬化に効果を発揮します。

高脂血症とは?
血液中の脂肪分(コレストロール、中性脂肪など)が異常に多い状態のことをいいます。女性の半数、男性の7割が高脂血症であるとも言われています。肥満の人はもちろん、平均体重の人でも高脂血症は増加傾向にあるようです。

血液をサラサラにする

サンザシは血小板の凝集を強く抑制します。スムーズな血液の循環は、代謝促進、冷え性の改善、血栓症の予防など、健康維持に欠かせません。

血栓症とは?
血管中に血栓ができる血栓症(心筋梗塞や脳梗塞)が増加しています。特に脳梗塞は後遺症による寝たきりや痴呆になるケースが多く、介護などの点で社会問題となっています。